海外駐在の給料、ホントのところ


海外駐在すれば給料が増えるってホント?


海外駐在員は経済的にメリットがある、とよく言われます。ネットでは1.5倍だ!なんていう刺激的な表現もありますね。

さて、本当に1.5倍も給料が増えるのでしょうか?
増えるなら、どんな理由で?

自分の給料をベースに検証してみました。さすがに個人情報なので数字は非公開ですが、イメージや構造を理解していただくには十分だと思います。

ご注意頂きたいのは、給料の仕組みは企業ごとに大きく異なること。例えば、駐在員に対し給料で厚く手当をする会社もあれば、福利厚生部分で対応する会社など様々。

また、福利厚生一つとっても子供の学費補助制度の違い(日本人学校分のみ補助=約30万円/人・年 OR 何人インターナショナルスクールに通わせても全額補助=50300万円/人・年)等、違いは多岐にわたります。

そのあたりを念頭に置いていただいて、「基本はこんな感じなのね」とイメージを持つ参考にしてください。




検証を通じて、分かったこと。給料は確かに増えます。
でも、それ以上に、給料が増えた実感を与える駐在ボーナスともいえる構造が隠れていました!

駐在員の給与の構造例


基本的には、日本で働いている場合は日本給料のみですよね。

海外駐在すると、今の会社の場合は次のように分かれます。
 ①現地事業体からもらう給料
 ②日本から海外に送金される給料
 ③日本で日本国内に支払われる給料
 ④賞与(日本側が払う)

現地事業体に出向するので、現地企業からもお給料をもらいます。メッチャ増えるように感じるかもしれませんが、海外手当を除けば、日本でもらっている給料レベルになるように設計されています。つまり、物価水準が安い国なら、現地給与と今の給与の差が補てんされ、物価水準が同じような先進国なら、特に補填はありません。


支給額ベースで駐在員給料は増えるのか?


答えはYES

弊社の場合は1.5倍はいきませんね。意外と増えていない印象。

注目は日本給料と現地給料合計が、海外赴任前の給料並みであること。日本から支給される海外手当相当の海外給与分が増加の理由でした。

海外手当とは、物価差や赴任地の危険度に対する手当の意味があります。新興国でも、場所に応じたハードシップによって変わります。クアラルンプールよりジャカルタ、ジャカルタよりインドやパキスタン、南アは高くつきます。

ハード(危険)な所に行けば給料も上がる仕組み。当然と言えば当然の内容がここにありました。


手取りベースでは更なる収入増となる仕組み

では、所得税を控除した、実際の実入りである手取りベースではどうでしょう。

比率は1.4倍に上がります!

この秘密は、住宅費・自動車保険・医療費などの固定費の負担の有無によるもの。

弊社の場合、住居手当はありませんし、車の貸与制度もありません。日本に住んでいたら自分の給料から払います。つまり全部自己負担。

ところが、海外駐在中は住居費を始めこれらの費用は会社負担。

海外駐在による固定費の会社負担ボーナスとでもいったものでしょうか。このおかげで、自分の手取りが減らず実質的には給料増に貢献します。

駐在地と日本の物価差が更に収入増に拍車

物価差も収入増につながります。特に日本より物価が安い新興国に駐在する人には、これが効いてきます。

何が効くのか? 現地通貨ベースでもらう給料部分の日本との物価差です。執筆当時在住していたマレーシア・クアラルンプール(KL)を例に考えてみましょう。

例えば、東京を1とした時のKLの物価指数は0.38。つまり、東京の約2.6分の1!。

逆に言えば、日本の物価水準前提でもらう給料は、KLでは2.6倍の価値があるのです。

現地の物価感覚がある方ならわかると思いますが、例えばマレーシア庶民のファストフードである麺類。日本なら立ち食い一杯300円~500円程度ですが、マレーシアなら椅子に座るお店で200円~300円程度。1.5倍程度の違いがあります。

同じものでも価値が違う。そう考えると、円貨だけで考えると先に書いたように1.4倍程度の給料増でも、現地物価水準に引き直すと、駐在者がもらう給料はそれ以上の価値が生まれます。


ま、この海外駐在による物価差ボーナスがあるから、駐在員はローカルの生活水準では無く、駐在員(外国人)としての生活水準を維持できるのです。

この水準って、新興国以下では、駐在員は超金持ちとは言えなくとも、金持ち階級そのもの。

インドネシア時代、現地給料は10万円程度でしたが、家庭車のドライバーの月給は2万円弱でした。これは当時のジャカルタの最低賃金並、ざっくりいえば日本での20万円位ですか。

これで、彼はきちんと妻子供を養っていました。ここを基準に見たら、当時私がもらっていた給料は、日本でいえば、100万円以上に相当する水準の給料をもらっていたわけです。

世に出回る駐妻のイメージ(幻想ですが)は、日本物価水準でもらう給料と現地の物価差を活用して、お買い物やエステを楽しむところから生まれているのです。

まとめ

駐在すれば確かに給料は増える

すこしまとめてみましょう。

 ①支給額ベースで、海外手当分給料は良化
 ②手取りベースでは、①+固定費の会社負担ボーナスさらに良化
 ③現地物価ベースに置き直すと、物価差ボーナスさらにさらに良化

この3ステップがあるため、「駐在員が恵まれている」と思われるのでしょう。
これだけ読むと、夢広がりますよね。
でも、そうじゃないのが現実社会。次はそのことについても述べます。


給料が増えるから駐在はオイシイのか?

ものごとは裏表あります。
一つの視点だけでは片手落ち。給与の理屈は分かったけど、なぜ高い給与設定になるのでしょうか?
会社はボランタリーに貴族生活を体験させてくれるのでしょうか?
それならなぜ?そもそも、もらった給与で貴族のような生活ができるのでしょうか?


貴族のような生活ができるのか?

できません。身も蓋もありませんが、できません。

駐在には、それなりにお金がかかります。

駐在生活はかりそめの生活ですから、日本の生活レベルをある程度維持することが殆どです。

例えば、日本食材の購入。輸入品なら日本の2~3倍の値段です。これだけで、先ほどの物価差による給料アップは相殺されますね。

現地品もあります。例えば豆腐。

スーパーの店頭には6か月持つ豆腐を売っています。隣には2倍の価格で日本からの輸入した豆腐もあります。あなたならどちらを買いますか? 海外駐在員の生活ってそんな感じなのです。

また、衛生管理上、どうしても信頼できる高級スーパーを使いがち。そうすれば、ローカルマーケットより高価だったりします。先ほど、KLの物価水準は東京の2.6分の1と書きましたが、駐在員が行きがちなこぎれいなお店なら、劇的な価格差はありません。

それだけではありません。デングや肝炎等の衛生管理、大気汚染、施工不良による住宅トラブル、治安への配慮等、日本ではそれほど気を遣わなくて良い分野での配慮は欠かせませんし、それだけ神経を使う生活があります。


給料増加は苦労の対価

10年以上海外駐在して、そのうち大半を新興国で過ごしてきた経験から考えると、個人的には、駐在員の給料は特権階級に選ばれた人間への対価だとは思いません。

海外で苦労しながら生活するための対価であり、給料が高いのはそれだけ苦労があることを意味していると考えています。


駐在で大切なことは何だろう?

先に述べたように、現地物価水準で見ると給料は劇的に高くなります。また、日本円ベースで見ても、1.5倍程度はもらえそうです。それでも言います。お金を理由に駐在を希望することはお勧めしません

なぜか?

もちろん、お金はあるに越したことはありません。ですが、駐在した時にぶつかる異文化コミュニケーションの壁、日本から離れたところで生活する苦労、お金は解決してくれません。お金のために、コミュニケーションを犠牲にしていては、せっかくの海外駐在せ一かつも実りあるものになりえません。

生きる目的がお金ではないのと同じことで、3年4年を金のために過ごすって、勿体ないですよね。

駐在は、高い給料をもらい豪遊するためヨソの国に住むのではなく、駐在国の人のためになる仕事をしに行く立場。そのことを第一義だと考えられる人でないと、カネカネだけでは、なかなかしんどいだろうな、というのが経験者としての実感です。




さて、いかがだったでしょうか?
駐在すれば給料は増えるは事実。そこだけ取り上げればいいこともありますが、物事は多面的に見ましょう。駐在の目的をはき違えないようにして、実りある駐在生活を実現して下さい!

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