海外駐在でゴルフをしない選択


海外駐在で休日のゴルフに頭を悩ます人も少なからずおられるのではないでしょうか?

銀行や商社の方と話をすると、息をするのと同じくらい当たり前の感覚でゴルフの話になります。

そんなこともあってか、駐在員のレクリエーションといえばゴルフ、と発想されるくらい浸透してます。とはいえ、海外駐在にあたって、そこまでゴルフする意欲ない方もおられるのではないでしょうか?

自分は、10年、3か国の駐在生活で実は一回もゴルフに行ったことがありません。というか、四十ン年の人生で未だゴルフに行ったことがありません。

それでも、駐在員を続けてこれましたし、それなりに昇進もしていますので、ゴルフに対しては「したくなけりゃしなければいいんじゃないの」ぐらいの距離感です。

こんな出来上がりの自分が、どうやって海外駐在中ゴルフに行かずに済ませてきたのか、ノウハウを共有します。

もちろん、ゴルフをしたい方を否定するわけではありません。記事のポイントは、ゴルフをしたくない人が、自分の気持ちに素直に行動できるノウハウを提供することです。


なぜ、ゴルフをしなかったのか?


以下の二点に集約されます

    ゴルフに興味がなかった
    家族との時間を持ちたかった

上司や先輩の意見は全く別にして、自分自身の意思として、積極的にゴルフを選ぶ理由はありませんでした。水泳やジョギングなど好んで行う運動もありますが、球技がもともと肌に合わなかったこともあり、元来ゴルフに興味はありませんでした。


後者の「家族との時間」については、端的にいえばゴルフと家族を秤にかけたらどっちが重いのか、ということですね。

過去駐在したインドネシアやマレーシアのような熱帯国では、ゴルフをするのはなかなか過酷です。なるべく涼しいうちにプレーをするため、早朝からスタートすることも少なくありません。インドネシアでは、金曜日深夜1時頃家に帰り、土曜日朝5時にはゴルフに出発するという日常を繰り返している先輩が実際にいました。

インドネシア赴任当時、毎日深夜残業が続き、平日は家族と過ごす時間など一切ありませんでした。1歳の子供と唯一過ごせるのが土日。家族と駐在仲間とゴルフ、優先順位はいわずもがなでした。妥協の余地はありませんでした。

この考えを迷わず持った背景には、会社の人と休みの日まで顔を合わせたくない、という人嫌い?な性格も関係していたかもしれません。

どうやってゴルフを始めずに済ませたか?


赴任前


勝負はここから始まっています。駐在が決まった時、早々に先輩から「ゴルフクラブやシューズも持ってくるように」と言われました。そう言い渡される方も少なからずおられませんか?

自分はこれに一切従いませんでした。

純粋にゴルフを愛している人もおられる一方で、単身で土日することがないから何となくゴルフをしている、という人も一定層います。時間つぶしにゴルフをしている人は、週末の話し相手が欲しいだけで、ゴルフに付き合うと、そのあとの食事、マッサージなど時間をどんどん取られる可能性があります。

行きたければ行けばいいのですが、行きたくない人がそれに付き合う必要はありません。プライベートの時間は自分が好きなように使う、このことをしっかり意識しましょう。
自分の時間の使い方について、他人に忖度する必要などないのです。



赴任後

「ゴルフは?」と聞かれたら堂々と潔く「しません」と言う。

先述のように、駐在員の少なからぬ割合の人が寂しさでゴルフをしています。そこに足を踏み入れると線を引きにくくなりますので、最初にきちんと線を引くことが肝心です。

その際、大切なことは、堂々としていること。ゴルフをしないことも当たり前のことだという態度でいること。ゴルフをするのが当たり前、と思っている人の中には「ゴルフをしない選択肢が無い」と思い込んでいる人も多いので、当然のように「しない」という態度で、相手をドギマギさせてあげましょう。


ゴルフをしないことは、善悪ではなく、好みや興味の話です。ジャニーズやAKB48に興味を持つ持たないのと、ゴルフをするしないは同じレベルの話です。ゴルフをAKB48に置き換えてみたら、「興味ない」ことは全く後ろめたくありませんよね。そんなものです。


駐在中ゴルフをする/しないは単なる価値観の差


個人個人、興味や関心は違います。ゴルフを楽しみたいと思う人がいれば、そう思わない人がいて当たり前。ゴルフする気がない人は後者、誘ってくる人は前者。それだけです。理解されなくてもいいのです、他人なんですから。

繰り返しになりますが、ゴルフしないことにやましさを感じる理由は何もないのです。堂々としていればいいのです。

他人がゴルフで楽しんでいる時間、自分なりに大事と思う別のことに時間を費やしているのですから何も後ろめたいことはありません。「大事なこと」が違うだけなのです。


自分も「みんなやってる」「他に何すんの?」「やるとおもろいで」と言われてきました。それでもゴルフせずに足かけ10年以上駐在生活過ぎますが、業務に特に支障ありません

今もゴルフしないと言うと変人見る目つきになる人いますが、ほっといたらいいのです。「あんたが知らん楽しい世界を知ってるから、別に何とも思わんよー」って心の中でつぶやいておきましょう。繰り返しになりますが、価値観が違うだけなのです。


自分は駐在中一切ゴルフをしなかったので、むしろネタにしています。先日も先輩がわざわざ役員の前で「1回ぐらいやってみたら」としつこく誘ってきたので「10年駐在して1回もせずに来ている変人として、このまま行きまーす!」と宣言しました。その後、先輩は二度と言ってきてません。


ちなみに興味深いのは、こういうやり取りでも人柄とは出るもの。尊敬していた先輩は「ゴルフをしないのは自由だけど、ゴルフをする人も多いので、会話についていけるくらいの知識は持っておいたほうが良いよ」というアドバイスをくれました。こう言われると、素直にアドバイスを聞いてみようって気になるし、大人なものの言い方ができる人間になろうって勉強になりますよね。


模範?応答集


心構えを説明したところで、少し実践的な話に移りましょう。ここで海外駐在のゴルフに関わる応答集をまとめておきます。

Q「みんなしているよ」


みんながしているから、自分もしなければいけない、というのは理屈でも何でもなく、単なる思い込みです。極論ですが、みんなが万引きしているからといって、自分もしていいとはならないですよね。貴重で限られた海外駐在、自分の優先順位・価値観があることをしっかり示して、人に時間を奪われないようにしましょう。

A「そうなんですねー。家族と一緒に来てて、平日は早朝出勤・深夜帰宅で、週末しか家族に会えないので遠慮しときます。この前の日曜日は子供に「また来週」って言われちゃってて、ヤバイんですよ」
これは、インドネシア駐在時代自分が実際に使っていた話法です。「帯同のXXさんはしている」とか「ちょっとくらいゴルフに時間使ってもいいんじゃない」と突っ込んでくるケースもありますが、人は人、自分は自分。「自分にはゴルフよりも優先させる個別事情がある」ことをしっかりと示しましょう。

子供はダシに使いやすいので、フル活用しました。「週末は一歳の子供の世話をするので行けません。平日は顔を合わせないので、忘れられちゃうんですよね」という言い方をしたこともあります。


Q「ゴルフ面白いから、一緒にやってみようよ。なんでしないの?」


A「『家でパン焼くの面白いのに何でしないんですか?』って言われるとちょっとひるむでしょ?」

自分が面白いから、他人も面白い、これも理屈ではありません。

自分の趣味を他人に押し付けるのは、一般的には迷惑な話ですよね。相手がひるむような自分の趣味をぶつけてみる方法も効果的です。



Q「健康にいいよ。運動不足解消にいいよ」



A「日本からの習慣で、ジムで体鍛えてます」

A「日本からの習慣でジョギングしてるんですよねー」

海外駐在の健康維持はゴルフだけが手段ではありません。要は、自分なりの健康維持の方法が示せればいいのです。海外駐在でゴルフを誘う理由のほとんどは、究極的には同調圧力です。
なので、同調しない理由を理屈で返すのです。ジムの話などは、東南アジアは各コンドにあって、実際には相手が自分が行っているかどうか分からないので、多少ハッタリも効くかもしれません。

こういった回答もあります。
A「ローカルに溶け込むために、ここで人気のスポーツのXXXを始めたので、今はゴルフ行けません

例えばマレーシアなら、コンドのジム(体育館)に行けばすぐに国技ともいわれるバドミントン仲間が見つかります。しかも、人種問わず盛んです。 

こういう形だと、日本人駐在員で固まらずローカルに溶け込もうとする、駐在員としてあるべき形にもなりますよね。

ちなみに、XXXは音楽や演劇などに置き換えも可能ですし、自分の趣味に合わせることもできます

Q「付き合い悪いね。情報交換にもなるから行っといたほうがいいよ」「サラリーマンなんだからさ、そこは付き合いもあるでしょ」

A 笑ってやり過ごしましょう
休みのゴルフが仕事なのか楽しみなのか、言っている本人も理解できてないことを露呈しており、公使の区分をつけた論理的な会話は期待できません。ほとんどのケース、仕事できちんとコレポンできていればゴルフを一緒にしなくても人間関係損なうことはありません。


ゴルフをしない理屈集


過去ツイートで紹介した、海外駐在中にゴルフをしない理屈を以下に挙げます。

・日本ではゴルフ離れが進んでいる

 「ゴルフってバブルの頃から人気半減で、若者離れしてるんですよ」

 今取り組んでいるスポーツ、年代別にみたら、20~30代は4位でしかありません。バブル('89)はゴルフが人気1位(34%)ですが、'19は3位(17%)でm参加する人は半減しており、少なくとも日本国内では、みんながするようスポーツの地位から脱落しています。駐在界隈で、ゴルフがあたかもメジャースポーツかの様に語られるのは、単に時代の変化に追いついていない、昭和・平成が残っているだけなのかもしれませんね。

元記事(住友生命の調査結果) 



 ルフしないことが企業業績向上につながる


「アメリカの名経営者を見習っています」

 '16に米で実施されたS&P1500企業の業績と経営者のゴルフに相関関係があり、ゴルフをする回数の多い経営者の会社は、業績で見劣りとの調査結果が出ています。

ゴルフ好きはダメ経営者?(猪瀬聖) - Yahoo!ニュース

「ゴルフ好きの会社経営者は会社をダメにする」。米国の著名な経営誌『ハーバード・ビジネス・レビュー』に少し前に掲載された記事が、いま、米国内でちょっとした話題になっている。きっかけは、就任3カ月で早くも「ダメな大統領」の烙印を押されつつあるドナルド・トランプ大統領の、ひんぱんなゴルフ場通いだ。 ...

ま、これは言う相手を選ばないと喧嘩売っちゃうので使い方は要注意ですけど。


    ゴルフしない有名経営者もいる


「あの星野リゾートの星野社長もゴルフしないんですって」
  
  星野社長 「しないことを決めることが大切。ゴルフや会食でネットワーク作りに励んでも、すぐに成果が出るわけでもなく効率悪い。だったら、わざわざ得意でもないゴルフにわざわざ行く必要はない」「やりたいこと、自分に刺激を与えることに時間を割きたい」

星野リゾート・星野佳路 いくつになっても柔軟な発想を忘れない

《『THE21』2014年11月号より》  「リゾート運営の達人になる」ことを目標に掲げ、従来の日本旅館の枠にとらわれないユニークな試みで国内の観光業界に新風を巻き起こしてきた星野リゾー...

最後に


さて、いかがだったでしょうか。

皆さんを取り巻く環境によっては、現実はこんなにきれいなものではないかもしれません。自分は、幸いにもゴルフをしない、ということを尊重してくれる人に恵まれたのは事実だと思います。

それでも、このノウハウが、海外駐在でゴルフに頭を悩ませる方のインスピレーションになり、少しでも海外駐在の皆さんの心労を取り除くことになるヒントになれば幸いです。

貴重な自分の時間、人の押し付けに流されて消費してしまうのは勿体ですよね。特に任期がある海外駐在期間は、現地で使える時間は限られているのです。貴重なのです。

自分が大切にしなければいけないことは何なのか、よく見極めて、せっかくの海外駐在を有意義なものにしたいですね。

4 件のコメント :

  1. 米国在住の日系企業駐在員の者です。家族で赴任しております。
    "海外駐在でゴルフをしない選択"の記事、拝見しました。YASUさんのお考えに100%同意します。
    私は球技が幼い頃より大の苦手で、ゴルフも全く出来ないので(スコアが常時150前後という壊滅的なレベルです)出来ればやりたくないのですが、日本人駐在員の同調圧力に負けて毎月のように嫌嫌でやっております。
    自分はゴルフをやらない人間だときっぱり言えない自分が恥ずかしくなりました。
    ゴルフをやらない人間を村八分にするような狭い日本人社会が本当に嫌になっております。
    私は家族の事情で来年日本に完全帰国させて貰う見込みなのですが、この村社会から離れられる見込みが出来てほっとしているのが正直な所です。

    結局、このような社会で自分を偽り、自分を貫けないのは結局自分に自信がないからなのだろうと思っています。誰もが注目するような圧倒的な実績を仕事で出すしかないんでしょうかね…。

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    1. 匿名さん、コメントありがとうございます。

      現状にもやもやしたお気持ちをお持ちのようですね。でも、環境が変わり、時間がたてば、少しづつ自分の中で消化されていくケースもあります。

      自分の場合、上司のパワハラ(長時間に渡るネチネチとした説教、小言)に悩まされた時がありました。「なりたくない上司含め様々な上司像を知ることで、自分が目指す管理職の姿が描く肥やしになった」と10年たった今は思えるようになっていますが、当時はほんと会社に行きたくなかったです。渦の中に巻き込まれている時はなかなか客観的に自分の状況を見つめることが難しいんですよね。

      ムラ社会に抗して心を折ってしまったら、それはそれで不幸な結果です。ひょっとしたらご家族含めた総体としては、Betterなご選択をされらてらっしゃるのかもしれません。今のお辛い環境の終わりも見えているようですので、それが大きな希望ですね。

      長くなりましたが、言いたかったのは、(1)今の匿名さんご自身を卑下する必要はないこと (2)難しい環境の中、現状をマネージされていることは、すごいことだと思ったということ以上2点でした。

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  2. 上の匿名の者です。
    YASUさん、コメント有難うございました。勇気付けられました。残りの米国生活楽しみます!
    弊社の他の駐在員に特定されたくないので匿名とさせて頂きました。

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    1. 匿名さんの駐在生活が少しでも楽しくなることに資すれば、当ブログの本望です!
      Twitterもお楽しみください!

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