海外駐在の理想的な赴任期間(組織の観点から)


以前、駐在期間は3~5年が適当だという記事を書きました。 海外駐在の理想的な赴任期間 その時は、ライフデザインの観点から定期的に環境を変えることの提案と、現実的に駐在地に慣れて仕事がうまく回り始めるのが2~3年目であることが理由でした。

これらは、個人の立場からの見方でしたが、組織を運営する観点からの理想的な任期はどうでしょうか?


組織運営上も海外駐在員は5年程度で帰任が望ましい


職位にもよるかもしれませんが、「海外に行くこと」が目的のトレーニー職でもなければ、あくまでも経験論ですが、やはり3~5年と言うところではないでしょううか。同じ仕事を同一人物が長期間同じ仕事を続けると、他の人は分からなくなるブラックボックス化してしまいがちです。

そのためにも担当を変え、新鮮な視点を入れることで、業務の改善や問題点の抽出が実現しやすくしますよね。


また、各個人をあまり長期同じ仕事につけておくと、本人の成長機会・学習機会を奪ってしまうことにもなります。例えば経理部に、資金・主計・原価管理・税務の4つの仕事があったとします。一通りの業務を経験して40歳で管理職になるとしても、入社以降18年しかありません。この間に入ってくる研修期間や出向期間を考えると、一つの業務に5年もかけていては間に合いません。もっと短いスパンで回していく必要があります。

海外駐在そのものは、一人でいくつもの仕事をすることになるので、日本よりも広がりは大きいものの、6年、7年も海外駐在することは、本人が他の仕事にローテーションできる期間を縮めることになるので、5年が最大限と言ったところではないだろうか。

組合員の場合、海外赴任期間の上限を5年と定めている会社もあるが、そういったところの配慮があるのかもしれませんね。


海外駐在員は組織強化のための貴重なポスト


あともう一つ、組織運営のの視点からの見方もあります。駐在員はサラリーマン。会社組織のコマであり、組織の強化に貢献することも必要ですよね。

組織の観点からすると、海外駐在ポストは、会社を強化するための貴重なポスト。ここに特定の個人が居座ってしまうと、海外で人材を育成する・海外でのビジネス経験を獲得する機会を一つ失ってしまうことになります。

それは、短期的には分からないでしょうが、中長期的には組織の強化や人材の再生産につながっていないため、少なからず影響が出てくるでしょう。


個人と組織人のバランスは悩ましい所


難しいのは、組織の観点と、個人の行動とどうバランスさせるか。個人的な心情と組織人としてのバランス、時には二律背反する内容が同じ人物に求められるからです。

海外駐在に慣れれば、海外にいる方が日本働くより心地よく感じる人もいます。海外なら、日本にいる時よりも権限が大きくなったり、組織がフラット・リーンなぶん、仕事がやりやすくなるというメリットは確かに大きいです。

また、東南アジアだと駐在員の立場なら給与レベルも現地の生活水準に比べると高い水準の生活になることが多く、快適な生活を過ごせるケースもあります。これも、海外駐在の醍醐味。そういう生活に慣れてしまうと、日本に帰って、狭い家から満員の通勤電車に長時間揺られ、周りの眼を気にしながら組織の中に埋没することを避けたくなる気持ちが起こることも十分あり得ますよね。


海外駐在ポストは「借り物」


それでも、5年もすれば一度日本へ帰任した方が良い、というのが私見です。

もし海外駐在のポストがとても良いものだと考えているなら、それは他の人にも経験してもらうべきものではないだろうか?というのが自分の思いです。

自分がいる駐在ポストは、自分のために用意されたご褒美では無いことがほとんどだろうから。

筆者の中では、国内外問わず、組織人であれば、自分がいるポストは「借り物」であり、しかるべき人に譲るべきもの、と考えるようにしています。自分がそのポストのベスト人材だと言えるほど自信があるわけでもないし、代替がきかない唯一無二の貴重な人材でもないと思っているからです。


後任は自分より若い人材を


だからこそ、筆者は意識的に自分で任期を意識し、その上で後任は自分が赴任した時の年齢と同じかやや若い人材を後任に推薦してきました。

そうでないと、組織としては成長していることにならないからです。後任は経験が未熟で苦労するかもしれませんが、そこを乗り越えれば、個人としての成長と組織の強化が並立できると考えています。

実際、インドネシア帰任時は、根回しの上、自分の着任時より2歳ほど若い人物を後任にしてもらいました。彼は見事に成長して、早々にマネージャーに昇格、他の部門からも頼りにされる人材となりました。当人にもよかっただろうし、組織としても良い結果が残せたと思っています。

それに年限を区切る方が生き方にけじめが出てくるのではないでしょうか。あと○○年だから、ここはふんばりどころ、と考えることもできるし、逆算できることで人生設計もしやすいのではないでしょうか。


ライフデザイン&組織強化の観点で海外駐在は3~5年


ということで、海外駐在の赴任期間はどれくらいがよいのか?と問われれば、今でも3~5年と言う思いに変わりはありません。それは、個人のライフデザインの観点に加え、この章で述べてきたように、組織強化、人材育成の観点からも3~5年が適切な期間だと考えるからです。



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